居宅介護住宅改修費及び居宅支援住宅改修費の支給について
  (老企第四二号)
 

(平成一二年三月八日)
(各都道府県介護保険主管部(局)長あて)
(老人保健福祉局企画課長通知)

 介護保険における居宅介護住宅改修費及び居宅支援住宅改修費の支給に関しては、介護保険法(平成九年法律第一二三号。以下「法」という。)、介護保険法施行令(平成一〇年政令第四一二号)、介護保険法施行規則(平成一一年厚生省令第三六号。以下「施行規則」という。)及び「厚生大臣が定める居宅介護住宅改修費等の支給に係る住宅改修の種類(平成一一年厚生省告示第九五号。以下「種類告示」という。)」において所要の規定を整備しているほか、「居宅介護住宅改修費支給限度基準額及び居宅支援住宅改修費支給限度基準額(平成一二年厚生省告示第三五号。以下「基準額告示」という。)」及び「介護の必要の程度が著しく高くなった場合における介護保険法第四五条第四項の規定により算定する額(平成一二年厚生省告示第三九号。以下「特例告示」という。)が平成一二年二月一〇日に公布され、同年四月一日から適用するをこととされたところである。

 このうち、種類告示の内容及び取扱いについては、「介護保険の給付対象となる福祉用具及び住宅改修の取扱いについて(平成一二年一月三一日老企第三四号当職通知)」においてお示ししたところであるが、このほか、居宅介護住宅改修費等の支給の取扱いは下記のとおりであるので、御了知の上、管下市町村、関係機関、関係団体、居宅介護支援事業者等に周知の上、その運用に遺憾のないようにされたい。

  住宅改修費の支給限度額
  (1) 支給限度基準額
   
住宅改修費の支給対象となる住宅改修は、被保険者の資産形成につながらないよう、また住宅改修について制約を受ける賃貸住宅等に居住する高齢者との均衡等も考慮して、手すりの取付け、床段差の解消等比較的小規模なものとしたところであり、これらに通常要する費用を勘案して、基準額告示において、居宅介護住宅改修費支給限度基準額及び居宅支援住宅改修費支給限度基準額を二〇万円としたところである。
このため、二〇万円までの住宅改修を行うことが可能であり、二〇万円の住宅改修を行った場合、通常、保険給付の額は一八万円となるものである。
  (2) 支給限度額管理
  @ 支給限度額と要介護状態区分等との関係
   
基準額告示においては、居宅介護住宅改修費支給限度基準額は要介護状態区分にかかわらず定額(二〇万円)とし、居宅支援住宅改修費支給限度基準額も同額としたところである。また、施行規則第七六条第一項及び第九五条の規定により、居宅介護住宅改修費の支給と居宅支援住宅改修費の支給は、同一の支給限度額で統一的に管理される。すなわち、要介護状態区分が変更された場合、要介護者が要支援者になった場合又は要支援者が要介護者になった場合であっても、それをもって支給限度額に変更があるわけではなく、支給限度額は、以前に支給された住宅改修費の額を支給限度基準額(二〇万円)から控除した額となるものである。
ただし、施行規則第七六条第二項の規定及び特例告示により、過去において最初に住宅改修費の支給を受けた住宅改修の着工時点と比較して介護の必要の程度が著しく高い要介護認定を受けている状態(要支援及び要介護状態区分が三段階以上上がった場合)で行った住宅改修について、初めて住宅改修費の支給を受ける場合には、それ以前に支給された住宅改修費の額にかかわらず、改めて支給限度基準額(二〇万円)までの住宅改修費の支給を受けることが可能となる。なお、この取扱いは一回に限られる。
  A 転居した場合の支給限度額管理
   

支給限度額管理は、施行規則第七六条第一項及び第九五条の規定により、現に居住している住宅に係る住宅改修費のみを対象として行うこととしており、当該住宅以外の住宅について支給された住宅改修費については、支給限度額管理の対象とはならない。よって、転居した場合には改めて支給限度基準額までの住宅改修費の支給を受けることが可能となる。

(注) これらの具体的取扱いについて別紙として解説を作成したので活用されたい。

  住宅改修費の支給申請
    住宅改修費の支給申請に当たっては、下記の書類を市町村に提出することとされているので留意されたい。
  (1) 申請書(施行規則第七五条第一項及び第九四条第一項)
   
第一号の「住宅改修の内容、箇所及び規模」は、改修を行った工事種別(種類告示の第一号から第五号までの別)ごとに、便所、浴室、廊下等の箇所及び数量、長さ、面積等の規模を記載することとするが、領収証に添付する工事費内訳書においてこれらの内容が明らかにされている場合には、工事種別のみを記載することとして差し支えない。
また、第二号の「住宅改修に要した費用」については、住宅改修費の支給対象となる住宅改修の費用とする。
  (2) 添付書類(施行規則第七五条第二項及び第九四条第二項)
  @ 領収証
   
第一号の「住宅改修に要した費用に係る領収証」には、工事費内訳書も添付する。工事費内訳書は、工事を行った箇所、内容及び規模を明記し、材料費、施工費、諸経費等を適切に区分したものとする。
なお、領収証は住宅改修費の支給対象とならない工事等の費用を含めた費用を記載して差し支えないが、この場合、申請書に記載された「住宅改修に要した費用」が種類告示の第一号から第六号までに掲げる住宅改修に要した費用として適切に算出されたものであることがわかるよう、工事費内訳書において算出方法を明示するものとする。
  A 住宅改修が必要な理由書
   
第二号の「住宅改修について必要と認められる理由が記載されているもの」は、被保険者の心身の状況及び日常生活上の動線、住宅の状況、福祉用具の導入状況等を総合的に勘案し、必要な住宅改修の工事種別とその選定理由を記載する。
また、当該書類を作成する者は、基本的には介護支援専門員とするが、市町村が行う住宅改修指導事業(リフォームヘルパー事業)等として、住宅改修についての相談、助言等を行っている福祉、保健・医療又は建築の専門家も含まれるものである。ただし、当該書類を作成しようとする者が、当該住宅改修に係る被保険者の居宅サービス計画を作成している介護支援専門員と異なる場合は、当該介護支援専門員と十分に連絡調整を行うことが必要である。
なお、介護支援専門員が当該書類を作成する業務は居宅介護支援事業の一環であるため、被保険者から別途費用を徴収することはできない。また、介護支援専門員又は居宅介護支援事業者が、自ら住宅改修の設計・施工を行わないにもかかわらず被保険者から住宅改修の工事を請け負い、住宅改修の事業者に一括下請けさせたり、住宅改修事業者から仲介料・紹介料を徴収したりすること等は認められない。
  B 完成後の状態を確認できる書類等
    第三号の「住宅改修の完成後の状態を確認できる書類等」とは、便所、浴室、廊下等の箇所ごとの改修前及び改修後それぞれの写真とし、原則として撮影日がわかるものとする。
  (3) 住宅の所有者の承諾書(施行規則第七五条第三項及び第九四条第三項)
    当該住宅改修を行った被保険者と、住宅の所有者が異なる場合は、当該住宅改修についての所有者の承諾書が必要であるので留意されたい。
  住宅改修費の算定上の留意事項
  (1) 住宅改修の設計及び積算の費用
    住宅改修の前提として行われた設計及び積算の費用については、住宅改修の費用として取り扱うが、住宅改修を伴わない設計及び積算のみの費用については住宅改修費の支給対象とならないものである。
  (2) 新築又は増改築の場合
   
住宅の新築は、住宅改修とは認められないので住宅改修費の支給対象とならないものである。
また、増築の場合は、新たに居室を設ける場合等は住宅改修費の支給対象とならないが、廊下の拡幅にあわせて手すりを取り付ける場合、便所の拡張に伴い和式便器から洋式便器に取り換える場合等は、それぞれ「手すりの取付け」、「洋式便器等への便器の取替え」に係る費用についてのみ住宅改修費の支給対象となり得るものである。
 
(3)
住宅改修費の支給対象外の工事も併せて行われた場合
    住宅改修費の支給対象となる住宅改修に併せて支給対象外の工事も行われた場合は、対象部分の抽出、按分等適切な方法により、住宅改修費の支給対象となる費用を算出する。
 
(4)
被保険者等自らが住宅改修を行った場合
    被保険者が自ら住宅改修のための材料を購入し、本人又は家族等により住宅改修が行われる場合は、材料の購入費を住宅改修費の支給対象とするものである。この場合、施行規則第七五条第二項第一号及び第九四条第二項第一号の「住宅改修に要した費用に係る領収証」は、材料を販売した者が発行したものとし、これに添付する工事費内訳書として、使用した材料の内訳を記載した書類を本人又は家族等が作成することとする。なお、この場合であっても、住宅改修が必要な理由書、完成後の状態を確認できる書類等は必要であるので留意されたい。
  (5) 一の住宅に複数の被保険者がいる場合の住宅改修の費用
    一の住宅に複数の被保険者が居住する場合においては、住宅改修費の支給限度額の管理は被保険者ごとに行われるため、被保険者ごとに住宅改修費の支給申請を行うことが可能である。ただし、一の住宅について同時に複数の被保険者に係る住宅改修が行われた場合は、当該住宅改修のうち、各被保険者に有意な範囲を特定し、その範囲が重複しないように申請を行うものとする。したがって、例えば被保険者が二人いる場合において、各自の専用の居室の床材の変更を同時に行ったときは、各自が自らの居室に係る住宅改修費の支給申請を行うことが可能であるが、共用の居室について床材の変更を行ったときは、いずれか一方のみが支給申請を行うこととなる。
  支援体制等の整備
  (1) 支援体制の整備
   
住宅改修は、被保険者の心身の状況及び日常生活上の動線、住宅の状況、福祉用具の導入状況、家族構成、住宅改修の予算等を総合的に勘案することが必要であり、福祉用具と同様に個別性が強いものである。また、ひとたび住宅改修を行うと、簡単に修正できるものではないことから、被保険者からの事前の相談に対し適切な助言等を行うことができるよう、市町村は、都道府県、関係機関、関係団体、居宅介護支援事業者等とも連携を図り、住宅改修に関する専門的知識及び経験を有する者等による支援体制を整備することが望ましい。
なお、市町村は、介護予防・生活支援事業の一つである住宅改修指導事業として相談、助言等の事業を行うことが可能である。
  (2) 事業者に係る情報提供
    被保険者が住宅改修の事業者を適切に選択できるよう、市町村は住宅改修の事業者に関する情報を提供することが重要である。特に、高齢者の住宅改修は一般の住宅改修と異なり、高齢者の心身の状況等を勘案すること、要介護状態の変化にも適切に対応していくこと等が求められるため、事業者に関し、高齢者の住宅改修の実績や、アフターサービスの方針等の情報についても提供するよう留意することとされたい。
 
(3)
事業者等に対する研修事業の実施
    適切な住宅改修が行えるよう、住宅改修の事業者の育成も重要であり、関係機関、関係団体等の協力を得て、都道府県又は市町村が研修事業を行うことが望ましい。
  市町村における介護保険とは別の住宅改修に関する助成制度
   
一部の市町村においては、法施行前から住宅改修について助成事業が行われているところであるが、法施行後も、法における住宅改修費の支給対象外の工事及びその費用が支給限度基準額を超えて行われる工事について、助成を行うことは可能である。
ただし、法に基づく住宅改修費の支給対象となる住宅改修を助成対象とする場合、法に基づく住宅改修費の支給を確実に優先させるためには、これを超える分について地方公共団体の単独事業として助成する旨の調整規定を、当該事業の根拠である条例等に盛り込むことが必要である。
  
 

別紙

住宅改修の支給可能額算定の例外に係る取扱いに関する解説

 (1) 要介護等状態区分が3段階以上上がった場合

例外1

 ・初めて住宅改修費が支給された住宅改修の着工日の要介護等状態区分を基準として3段階以上要介護等状態区分が上がった場合に、再度、20万円まで支給可能(以下「3段階リセットの例外」という。)

 ・基準となる要介護等状態区分から3段階以上上がっても自動的に3段階リセットの例外が適用されるのではなく、その時点で住宅改修を行わない場合は適用されない。

 ・3段階リセットの例外が適用された場合は、以前の住宅改修で支給可能残額があってもリセットされ、支給限度額は20万円となり、支給限度額管理もリセット後のみで行われる。

 ・3段階リセットの例外は一の被保険者につき1回しか適用されない。

 ・ただし転居した場合(例外2参照)は、転居後の住宅改修に着目して3段階リセットの例外が適用される。

 ※ 要介護状態等区分とは、要支援と要介護状態区分を合わせた6区分をいう。

   初めて住宅改修に着工した日の要介護等状態区分を基準として、要介護等状態区分が3段階以上上がった場合(次の6通り)は再度20万円まで住宅改修費が支給可能となる。

要支援
要介護3
 
要介護4
 
要介護5
要介護1
要介護4
 
要介護5
要介護2
要介護5

  ただし、この3段階以上というのは、着工日の要介護等状態区分を比較するものであり、その他の要介護等状態区分の履歴は関係ないことに留意されたい。

   したがって、@初めて認定された要介護等状態区分、例えば、要支援と認定されたもののその時点では住宅改修を行わず、要介護1となってから初めて住宅改修を行った場合は、要介護1を基準として要介護等状態区分が3段階以上上がった場合に再度20万円まで支給が可能となる。

 

   一方、A要介護1のときに初めて住宅改修に着工し、その後要介護4の認定を受けたもののこの時点では再度の住宅改修を行わず、後に要介護3と変更された場合には、3段階以上という要件を満たしていないため3段階リセットの例外は適用されない。この場合、再び要介護4又は要介護5の認定がなされれば、再度20万円まで支給が可能となる。

 

   さらに、B要介護1の時に初めて住宅改修に着工し10万円の住宅改修費の支給を受け、その後要介護3の時点でも10万円の住宅改修費の支給を受けた場合は、初めて住宅改修を行った要介護1を基準として要介護等状態区分が3段階上がり要介護4となった場合、再度20万円までの支給が可能となるが、逆にC要介護3の時に初めて住宅改修に着工し10万円の住宅改修費の支給を受け、その後要介護1の時点で10万円の住宅改修費の支給を受けた場合は、初めて住宅改修を行った要介護3が基準となるので、要介護4となった場合でも再度の住宅改修費の支給はできないこととなる。

 

 

   また、以前の住宅改修で20万円まで支給を受けておらず支給可能残額があっても、支給可能残額はリセットされ、再度の住宅改修の支給限度額は20万円となる。したがって、D要介護1の時に12万円の支給を受け、その後要介護4で住宅改修を行った場合は、支給可能残額の8万円はリセットされることとなり、20万円が支給限度額となる。

 

   ひとたび3段階リセットの例外が適用されると、その後の要介護等状態区分の変化にかかわらずリセット後で支給限度額管理がなされる。E要介護1の時に12万円の住宅改修を行い、その後要介護4で15万円の再度の住宅改修を行った場合、さらにその後要介護3となっても支給限度額管理はリセット後で行われるため5万円までの住宅改修費の支給が可能となる。なお、要介護1のときの支給可能残額8万円はすでにリセットされており、復活することはない。

   3段階リセットの例外は、一の被保険者につき1回限りであり、F再び要介護等状態区分が3段階以上上がっても適用されない。

 

 

 (2) 転居した場合

例外2

 ・転居した場合は、転居前の住宅に係る住宅改修費の支給状況とは関係なく、転居後の住宅について20万円まで支給可能(以下「転居リセットの例外」という。)

 ・3段階リセットの例外は転居後の住宅のみに着目して適用

  (転居リセットの例外が優先)

 ・転居前の住宅に再び転居した場合は転居前住宅に係る支給状況が復活

転居した場合は、転居前の住宅に係る住宅改修費の支給状況のいかんにかかわらず、転居後の住宅について20万円まで住宅改修費の支給が可能となる。また、G3段階リセットの例外も転居後の住居について初めて住宅改修に着工する日の要介護等状態区分を基準とする。

さらに、H転居前の住宅に再び戻った場合は転居前住宅に係る支給状況がづっかつし、転居リセットはなかったのものとして取り扱うこととなり、したがって、3段階リセットの例外できじゅんとなり要介護等状態区分も過去のものが適用されることとなる。

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