老企第25号    
一部改正の法令及び、通知


第3 介護サービス

 訪問介護
   
1  人員に関する基準
 
(1) 訪問介護員等の員数 ( 居宅基準第5条第1項 )
指定訪問介護事業所における訪問介護員等の員数については、常勤換算方法で2.5人以上と定められたが、これについては、職員の支援体制等を考慮した最小限の員数として定められたものであり、各地域におけるサービス利用の状況や利用者数及び指定訪問介護の事業の業務量を考慮し、適切な員数の職員を確保するものとする。
勤務日及び勤務時間が不定期な訪問介護員等(以下「登録訪問介護員等」という。)についての勤務延時間数の算定については、次のとおりの取扱いとする。
登録訪問介護員等によるサービス提供の実績がある事業所については、登録訪問介護員等1人当たりの勤務時間数は、当該事業所の登録訪問介護員等の前年度の週当たりの平均稼働時間(サービス提供時間及び移動時間をいう。)とすること。
  登録訪問介護員等によるサービス提供の実績がない事業所又は極めて短期の実績しかない等のためイの方法によって勤務延時間数の算定を行うことが適当でないと認められる事業所については、当該登録訪問介護員等が確実に稼働できるものとして勤務表に明記されている時間のみを勤務延時間数に算入すること。なお、この場合においても、勤務表上の勤務時間数は、サービス提供の実態に即したものでなければならないため、勤務表上の勤務時間と実態が乖離していると認められる場合には、勤務表上の勤務時間の適正化の指導の対象となるものであること。
  出張所等があるときは、常勤換算を行う際の事業所の訪問介護員等の勤務延時間数には、出張所等における勤務延時間数も含めるものとする。
 
(2) サービス提供責任者(居宅基準第5条第2項)
  事業の規模に応じて1人以上の者をサービス提供責任者としなければならないこととされたが、その具体的取扱は次のとおりとする。
管理者がサービス提供責任者を兼務することは差し支えないこと。
サービス提供責任者の配置の基準は、以下のいずれかに該当する員数を置くこととする。
  当該事業所の月間の延べサービス提供時間(事業所における待機時間や移動時間を除く。)が概ね450時間又はその端数を増すごとに1人以上
  当該事業所の訪問介護員等の数が10人又はその端数を増すごとに1人以上
従って、例えば、常勤割合が比較的高いなど、訪問介護員等1人当たりのサービス提供時間が多い場合は、月間の延べサービス提供時間が450時間を超えていても、訪問介護員等の人数が10人以下であれば、ロの居宅基準によりサービス提供責任者は1人で足りることとなる(具体的には、例えば、常勤職員4人で、そのサービス提供時間が合わせ320時間、非常勤職員が6人で、そのサービス提供時間が合わせて200時間である場合、当該事業所の延べサービス提供時間は520時間となるが、ロの居宅基準により、配置すべきサービス提供責任者は1人で足りることとなる)。
なお、指定訪問介護事業者が、指定介護予防訪問介護事業者の指定も併せて受け、かつ、これらの各事業が同じ事業所で一体的に運営されている場合については、第2の3の定めるところにより、これらの各事業の訪問介護員等の人数又はサービス提供時間を合算して計算することができるものとする。
サービス提供責任者については、次のいずれかに該当する常勤の職員から選任するものとすること。
  介護福祉士
  介護保険法施行規則 ( 平成11年厚生省令第36号 ) 第22条の23第1項に規定する介護職員基礎研修を修了した者
同項に規定する1級課程の研修を修了した者
  同項に規定する2級課程の研修を修了した者であって、3年以上介護等の業務に従事したもの
のニに掲げる「2級課程の研修を修了した者であって、3年以上介護等の業務に従事したもの」とは、社会福祉士及び介護福祉士法(昭和62年法律第30号)第40条第2項第1号に規定する「3年以上介護等の業務に従事した者」と同様とし、その具体的取り扱いについては、「指定施設における業務の範囲等及び介護福祉士試験の受験資格に係わる介護等の業務の範囲等について」(昭和63年2月12日社庶第29号厚生省社会局長、児童家庭福祉局長連名通知)の別添2「介護福祉試験の受験資格の認定に係わる介護等の業務の範囲等」を参考とされたい。
  なお、3年間の実務経験の要件が達成された時点と2級課程の研修修了時点との前後関係は問わないものであること。
  また、介護等の業務に従事した期間には、ボランティアとして介護等を経験した期間は原則として含まれないものであるが、特定非営利活動法(平成10年法律第1号)に基づき設立された特定非営利活動法人が法第70条第1項の規定に基づき訪問介護に係る指定を受けている又は受けることが確実に見込まれる場合であって、当該法人が指定を受けて行うことを予定している訪問介護と、それ以前に行ってきた事業とに連続性が認められるものについては、例外的に、当該法人及び法人格を付与される前の当該団体に所属して当該事業を担当した経験を有する者の経験を、当該者の3年の実務経験に算入して差し支えないものとする。
  なお、この場合において、介護福祉士国家試験の受験資格としても実務経験の算入を認められたものと解してはならないこと。

2級課程の研修を修了した者であって、3年以上介護等の業務に従事したものをサービス提供責任者とする取扱いは暫定的なものであることから、指定訪問介護事業者は、できる限り早期に、こ れに該当するサービス提供責任者に介護職員基礎研修若しくは1級課程の研修を受講させ、又は介護福祉士の資格を取得させるよう努めなけれぱならないこと。  

   
(3) 管理者(居宅基準第6条)
  指定訪問介護事業所の管理者は常勤であり、かつ、原則として専ら当該事業所の管理業務に従事するものとする。ただし、以下の場合であって、当該事業所の管理業務に支障がないときは、他の職務を兼ねることができるものとする。なお、管理者は、訪問介護員等である必要はないものである。
当該指定訪問介護事業所の訪問介護員等としての職務に従事する場合
同一敷地内にある又は道路を隔てて隣接する等、特に当該事業所の管理業務に支障がないと認められる範囲内に他の事業所、施設等がある場合に、当該他の事業所、施設等の管理者又は従業者としての職務に従事する場合(この場合の他の事業所、施設等の事業の内容は問わないが、例えば、管理すべき事業所数が過剰であると個別に判断される場合や、併設される入所施設において入所者に対しサービス提供を行う看護・介護職員と兼務する場合などは、管理業務に支障があると考えられる。ただし、施設における勤務時間が極めて限られている職員である場合等、個別に判断の上、例外的に認める場合があっても差し支えない。)
   
2 設備に関する居宅基準(居宅基準第7条)
   
(1) 指定訪問介護事業所には、事業の運営を行うために必要な面積を有する専用の事務室を設けることが望ましいが、間仕切りする等他の事業の用に供するものと明確に区分される場合は、他の事業と同一の事務室であっても差し支えない。なお、この場合に、区分がされていなくても業務に支障がないときは、指定訪問介護の事業を行うための区画が明確に特定されていれば足りるものとする。
   
(2) 事務室又は区画については、利用申込の受付、相談等に対応するのに適切なスペースを確保するものとする。
   
(3) 指定訪問介護事業者は、指定訪問介護に必要な設備及び備品等を確保するものとする。特に、手指を洗浄するための設備等感染症予防に必要な設備等に配慮すること。ただし、他の事業所、施設等と同一敷地内にある場合であって、指定訪問介護の事業又は当該他の事業所、施設等の運営に支障がない場合は、当該他の事業所、施設等に備え付けられた設備及び備品等を使用することができるものとする。
  なお、事務室・区画、又は設備及び備品等については、必ずしも事業者が所有している必要はなく、貸与を受けているものであっても差し支えない。
   
3

運営に関する基準

   
(1) 内容及び手続の説明及び同意
  居宅基準第8条は、指定訪問介護事業者は、利用者に対し適切な指定訪問介護を提供するため、その提供の開始に際し、あらかじめ、利用申込者又はその家族に対し、当該指定訪問介護事業所の運営規程の概要、訪問介護員等の勤務体制、事故発生時の対応、苦情処理の体制等の利用申込者がサービスを選択するために必要な重要事項について、わかりやすい説明書やパンフレット等の文書を交付して懇切丁寧に説明を行い、当該事業所から指定訪問介護の提供を受けることにつき同意を得なければならないこととしたものである。なお、当該同意については、利用者及び指定訪問介護事業者双方の保護の立場から書面によって確認することが望ましいものである。
   
(2) 提供拒否の禁止
  居宅基準第9条は、指定訪問介護事業者は、原則として、利用申込に対しては応じなければならないことを規定したものであり、特に、要介護度や所得の多寡を理由にサービスの提供を拒否することを禁止するものである。提供を拒むことのできる正当な理由がある場合とは、当該事業所の現員からは利用申込に応じきれない場合、利用申込者の居住地が当該事業所の通常の事業の実施地域外である場合、その他利用申込者に対し自ら適切な指定訪問介護を提供することが困難な場合である。
   
(3) サービス提供困難時の対応
  指定訪問介護事業者は、居宅基準第9条の正当な理由により、利用申込者に対し自ら適切な指定訪問介護を提供することが困難であると認めた場合には、居宅基準第10条の規定により、当該利用申込者に係る居宅介護支援事業者への連絡、適当な他の指定訪問介護事業者等の紹介その他の必要な措置を速やかに講じなければならないものである。
   
(4) 受給資格等の確認
居宅基準第11条第1項は、指定訪問介護の利用に係る費用につき保険給付を受けることができるのは、要支援認定を受けている被保険者に限られるものであることを踏まえ、指定訪問介護事業者は、指定訪問介護の提供の開始に際し、利用者の提示する被保険者証によって、被保険者資格、要介護認定の有無及び要介護認定の有効期間を確かめなければならないこととしたものである。
同条第2項は、利用者の被保険者証に、指定居宅サービスの適切かつ有効な利用等に関し当該被保険者が留意すべき事項に係る認定審査会意見が記載されているときは、指定訪問介護事業者は、これに配慮して指定訪問介護を提供するように努めるべきことを規定したものである。
   
(5) 要介護認定の申請に係る援助
居宅基準準第12条第1項は、要介護認定の申請がなされていれば、要介護認定の効力が申請時に遡ることにより、指定訪問介護の利用に係る費用が保険給付の対象となり得ることを踏まえ、指定訪問介護事業者は、利用申込者が要介護認定を受けていないことを確認した場合には、要介護認定の申請が既に行われているかどうかを確認し、申請が行われていない場合は、当該利用申込者の意思を踏まえて速やかに当該申請が行われるよう必要な援助を行わなければならないこととしたものである。
同条第2項は、要介護認定の有効期間が原則として6箇月ごとに終了し、継続して保険給付を受けるためには要介護更新認定を受ける必要があること及び当該認定が申請の日から30日以内に行われることとされていることを踏まえ、指定訪問介護事業者は、居宅介護支援(これに相当するサービスを含む。)が利用者に対して行われていない等の場合であって必要と認めるときは、要介護認定の更新の申請が、遅くとも当該利用者が受けている要介護認定の有効期間が終了する30日前にはなされるよう、必要な援助を行わなければならないこととしたものである。
   
(6) 法定代理受領サービスの提供を受けるための援助
  居宅基準第15条は、介護保険法施行規則(平成11年厚生省令第36号。以下「施行規則」という。)第64条第1号イ又はロに該当する利用者は、指定訪問介護の提供を法定代理受領サービスとして受けることができることを踏まえ、指定訪問介護事業者は、施行規則第64条第1号イ又はロに該当しない利用申込者又はその家族に対し、指定訪問介護の提供を法定代理受領サービスとして受けるための要件の説明、居宅介護支援事業者に関する情報提供その他の法定代理受領サービスを行うために必要な援助を行わなければならないこととしたものである。
   
(7) 居宅サービス計画等の変更の援助
  居宅基準第17条は、指定訪問介護を法定代理受領サービスとして提供するためには当該指定訪問介護が居宅サービス計画に位置付けられている必要があることを踏まえ、指定訪問介護事業者は、利用者が居宅サービス計画の変更を希望する場合(利用者の状態の変化等により追加的なサービスが必要となり、当該サービスを法定代理受領サービスとして行う等のために居宅サービス計画の変更が必要となった場合で、指定訪問介護事業者からの当該変更の必要性の説明に対し利用者が同意する場合を含む。)は、当該利用者に係る居宅介護支援事業者への連絡、サービスを追加する場合に当該サービスを法定代理受領サービスとして利用する場合には支給限度額の範囲内で居宅サービス計画を変更する必要がある旨の説明その他の必要な援助を行わなければならないこととしたものである。
   
(8) 身分を証する書類の携行
  居宅基準第18条は、利用者が安心して指定訪問介護の提供を受けられるよう、指定訪問介護事業者は、当該指定訪問介護事業所の訪問介護員等に身分を明らかにする証書や名札等を携行させ、初回訪問時及び利用者又はその家族から求められたときは、これを提示すべき旨を指導しなければならないこととしたものである。この証書等には、当該指定訪問介護事業所の名称、当該訪問介護員等の氏名を記載するものとし、当該訪問介護員等の写真の貼付や職能の記載を行うことが望ましい。
   
(9) サービスの提供の記録
居宅基準第19条は、利用者及びサービス事業者が、その時点での支給限度額の残額やサービスの利用状況を把握できるようにするために、指定訪問介護事業者は、指定訪問介護を提供した際には、当該指定訪問介護の提供日、内容(例えば、身体介護と家事援助の別)、保険給付の額その他必要な事項を、利用者の居宅サービス計画の書面又はサービス利用票等に記載しなければならないこととしたものである。
同条第2項は、当該指定訪問介護の提出日、提供した具体的なサービスの内容、利用者の心身の状況その他必要な事項を記録するとともに、サービス事業者間の密接な連携等と図るため、利用者からの申出があった場合には、文書の交付その他適切な方法により、その情報を利用者に対して提供しなければならないこととしたものである。
また、「その他適切な方法」とは、例えば、利用者の用意する手帳等に記載するなどの方法である。
なお、提供した具体的なサービスの内容等の記録は、基準第39条第2項の規定に基づき、2年間保存しなければならない。
   
(10) 利用料等の受領
居宅基準第20条第1項は、指定訪問介護事業者は、法定代理受領サービスとして提供される指定訪問介護についての利用者負担として、居宅介護サービス費用基準額の1割 ( 法第50条若しくは第60条又は第69条第3項の規定の適用により保険給付の率が9割でない場合については、それに応じた割合 ) の支払を受けなけれぱならないことを規定したものである。
居宅基準第20条第2項は 、利用者間の公平及び利用者の保護の観点から、法定代理受領サービスでない指定訪問介護を提供した際に、その利用者から支払を受ける利用料の額と、法定代理受領サービスである指定訪問介護に係る費用の額の間に、一方の管理経費の他方への転嫁等による不合理な差額を設けてはならないこととしたものである。
  なお、そもそも介護保険給付の対象となる指定訪問介護のサービスと明確に区分されるサービスについては、次のような方法により別の料金設定をして差し支えない。
   
  利用者に、当該事業が指定訪問介護の事業とは別事業であり、当該サービスが介護保険給付の対象とならないサービスであることを説明し、理解を得ること。
  当該事業の目的、運営方針、利用料等が、指定訪問介護事業所の運営規程とは別に定められていること。
  会計が指定訪問介護の事業の会計と区分されていること。
同条第3項は、指定訪問介護事業者は、指定訪問介護の提供に関して、前2項の利用料のほかに、利用者の選定により通常の事業の実施地域以外の地域の居宅において指定訪問介護を行う場合の交通費(移動に要する実費)の支払を利用者から受けることができることとし、保険給付の対象となっているサービスと明確に区分されないあいまいな名目による費用の支払を受けることは認めないこととしたものである。
同条第4項は、指定訪問介護事業者は、前項の交通費の支払を受けるに当たっては、あらかじめ、利用者又はその家族に対してその額等に関して説明を行い、利用者の同意を得なければならないこととしたものである。
   
(11) 保険給付の請求のための証明書の交付
  居宅基準第21条は、利用者が市町村に対する保険給付の請求を容易に行えるよう、指定訪問介護事業者は、法定代理受領サービスでない指定訪問介護に係る利用料の支払を受けた場合は、提供した指定訪問介護の内容、費用の額その他利用者が保険給付を請求する上で必要と認められる事項を記載したサービス提供証明書を利用者に対して交付しなければならないこととしたものである。
   
(12) 指定訪問介護の基本取扱方針及び具体的取扱方針
  居宅基準第22条及び第23条にいう指定訪問介護の取扱方針について、特に留意すべきことは、次のとおりである。
  提供された介護サービスについては、目標達成の度合いや利用者及びその家族の満足度等について常に評価を行うとともに、訪問介護計画の修正を行うなど、その改善を図らなければならないものであること。
指定訪問介護の提供に当たっては、介護技術の進歩に対応した適切なサービスが提供できるよう、常に新しい技術を習得する等、研鑽を行うべきものであること。
   
(13) 訪問介護計画の作成
居宅基準第24条第1項は、サービス提供責任者は、訪問介護計画を作成しなければならないこととしたものである。訪問介護計画の作成に当たっては、利用者の状況を把握・分析し、訪問介護の提供によって解決すべき問題状況を明らかにし(アセスメント)、これに基づき、援助の方向性や目標を明確にし、担当する訪問介護員等が提供するサービスの具体的内容、所要時間、日程等を明らかにするものとする。なお、訪問介護計画の様式については、各事業所ごとに定めるもので差し支えない。
同条第2項は、訪問介護計画は、居宅サービス計画(法第7条第18項に規定する居宅サービス計画をいう。以下同じ。)に沿って作成されなければならないこととしたものである。
同条第3項は、訪問介護計画は、利用者の日常生活全般の状況及び希望を踏まえて作成されなければならないものであり、その内容について説明を行った上で利用者の同意を得ることを義務づけることにより、サービス内容等への利用者の意向の反映の機会を保障しようとするものである。したがって、サービス提供責任者は、訪問介護計画の目標や内容等については、利用者又はその家族に、理解しやすい方法で説明を行うとともに、その実施状況や評価についても説明を行うものとする。
同条第4項は、訪問介護計画を作成した際には、遅滞なく利用者に交付しなければならないこととしたものである。
なお、訪問介護計画は、居宅基準第39条第2項の規定に基づき、2年間保存しなければならない。
  サービス提供責任者は、他の訪問介護員等の行うサービスが訪問介護計画に沿って実施されているかについて把握するとともに、助言、指導等必要な管理を行わなければならない。
   
(14) 利用者に関する市町村への通知
  居宅基準第26条は、偽りその他不正な行為によって保険給付を受けた者及び自己の故意の犯罪行為又は重大な過失等により、要介護状態又はその原因となった事故を生じさせるなどした者については、市町村が、法第22条第1項に基づく既に支払った保険給付の徴収又は法第64条に基づく保険給付の制限を行うことができることに鑑み、指定訪問介護事業者が、その利用者に関し、保険給付の適正化の観点から市町村に通知しなければならない事由を列記したものである。
   
(15) 緊急時等の対応
  居宅基準第27条は、訪問介護員等が現に指定訪問介護の提供を行っているときに利用者に病状の急変が生じた場合その他必要な場合は、運営規程に定められた緊急時の対応方法に基づき速やかに主治の医師(以下「主治医」という。)への連絡を行う等の必要な措置を講じなければならないこととしたものである。
   
(16) 管理者及びサービス提供責任者の責務
  居宅基準第28条は、指定訪問介護事業所の管理者とサービス提供責任者の役割分担について規定したものあり、管理者は、従業者及び業務の一元的管理並びに従業者に居宅基準第2章4節(運営に関する基準)を遵守させるための指揮命令を、サービス提供責任者は、指定訪問介護に関するサービス内容の管理について必要な業務等として、居宅基準第28条第3項各号に具体的に列記する業務を行うものである。
なお、サービス提供責任者は、利用者に対して適切な訪問介護サービスを提供するために重要な役割を果たすことにかんがみ、その業務を画―的にとらえるのではなく、訪問介護事業所の状況や実施体制に応じて適切かつ柔軟に業務を実施するよう留意するとともに、常に必要な知識の修得及び能力の向上に努めなければならない。
   
(17) 運営規程
  居宅基準第29条は、指定訪問介護の事業の適正な運営及び利用者に対する適切な指定訪問介護の提供を確保するため、同条第1号から第7号までに掲げる事項を内容とする規程を定めることを指定訪問介護事業所ごとに義務づけたものであるが、特に次の点に留意するものとする。なお、同一事業者が同一敷地内にある事業所において、複数のサービス種類について事業者指定を受け、それらの事業を一体的に行う場合においては、運営規程を一体的に作成することも差し支えない(この点については他のサービス種類についても同様とする。)。
指定訪問介護の内容(第4号)
  「指定訪問介護の内容」とは、身体介護、家事援助等のサービスの内容を指すものであること。
利用料その他の費用の額(第4号)
「利用料」としては、法定代理受領サービスである指定訪問介護に係る利用料(1割負担)及び法定代理受領サービスでない指定訪問介護の利用料を、「その他の費用の額」としては、居宅基準第20条第3項により徴収が認められている交通費の額及び必要に応じてその他のサービスに係る費用の額を規定するものであること(以下、他のサービス種類についても同趣旨)。
通常の事業の実施地域(第5号)
  通常の事業の実施地域は、客観的にその区域が特定されるものとすること。なお、通常の事業の実施地域は、利用申込に係る調整等の観点からの目安であり、当該地域を越えてサービスが行われることを妨げるものではないものであること ( 以下、居宅基準第53条第5号、第73条第5号、第82条第5号、第100条第6号、第117条第6号及び第200条第5号についても同趣旨。) 。
   
(18) 介護等の総合的な提供
 

居宅基準第29条の2は、居宅基準第4条の基本方針等を踏まえ、指定訪問介護の事業運営に当たっては、多種多様な訪問介護サービスの提供を行うべき旨を明確化したものである。指定訪問介護事業は、生活全般にわたる援助を行うものであることから、指定訪問介護事業者は、入浴、排せつ、食事等の介護(身体介護)又は調理、洗濯、掃除等の家事(家事援助)を総合的に提供しなければならず、また、指定訪問介護事業所により提供しているサービスの内容が、身体介護のうち特定のサービス行為に偏ったり、家事援助のうち特定のサービス行為に偏ったりしてはならないこととしたものである。また、サービス提供の実績から特定のサービス行為に偏っていることが明らかな場合に限らず、事業運営の方針、広告、従業者の勤務体制、当該事業者の行う他の事業との関係等の事業運営全般から判断して、特定のサービス行為に偏ることが明らかであれば、本条に抵触することとなる。
なお、「偏っている」とは、特定のサービス行為のみを専ら行うことはもちろん、特定のサービス行為に係るサービス提供時間が月単位等一定期間中のサービス提供時間の大半を占めていれば、これに該当するものである。
また、居宅基準第29条の2は、基準該当訪問介護事業者には適用されない。  

 
(19) 勤務体制の確保等
  居宅基準第30条は、利用者に対する適切な指定訪問介護の提供を確保するため、職員の勤務体制等について規定したものであるが、次の点に留意する必要がある。
指定訪問介護事業所ごとに、原則として月ごとの勤務表を作成し、訪問介護員等については、日々の勤務時間、職務の内容、常勤・非常勤の別、管理者との兼務関係、サービス提供責任者である旨等を明確にすること。
同条第2項は、当該指定訪問介護事業所の訪問介護員等によって指定訪問介護を提供するべきことを規定したものであるが、指定訪問介護事業所の訪問介議員等とは、雇用契約その他の契約により、当該事業所の管理者の指揮命令下にある訪問介議員等を指すものであること。
同条第3項は、当該指定訪問介護事業所の従業者たる訪問介護員等の質の向上を図るため、研修機関が実施する研修や当該事業所内の研修への参加の機会を計画的に確保することとしたものであること。特に、訪問介護員のうち、3級課程の研修を修了した者については、できる限り早期に2級課程の研修若しくは介護職員基礎研修を受講させ、又は介護福祉士の資格を取得させるよう努めなけれぱならないこと。
   
(20) 衛生管理等
  居宅基準第31条は、指定訪問介護事業者は、訪問介護員等の清潔の保持及び健康状態の管理並びに指定訪問介護事業所の設備及び備品等の衛生的な管理に努めるべきことを規定したものである。特に、指定訪問介護事業者は、訪問介護員等が感染源となることを予防し、また訪問介護員等を感染の危険から守るため、使い捨ての手袋等感染を予防するための備品等を備えるなど対策を講じる必要がある。
   
(21) 秘密保持等
居宅基準第33条第1項は、指定訪問介護事業所の訪問介護員等その他の従業者に、その業務上知り得た利用者又はその家族の秘密の保持を義務づけたものである。
同条第2項は、指定訪問介護事業者に対して、過去に当該指定訪問介護事業所の訪問介護員等その他の従業者であった者が、その業務上知り得た利用者又はその家族の秘密を漏らすことがないよう必要な措置を取ることを義務づけたものであり、具体的には、指定訪問介護事業者は、当該指定訪問介護事業所の訪問介護員等その他の従業者が、従業者でなくなった後においてもこれらの秘密を保持すべき旨を、従業者との雇用時等に取り決め、例えば違約金についての定めをおくなどの措置を講ずべきこととするものである。
同条第3項は、訪問介護員等がサービス担当者会議等において、課題分析情報等を通じて利用者の有する問題点や解決すべき課題等の個人情報を、介護支援専門員や他のサービスの担当者と共有するためには、指定訪問介護事業者は、あらかじめ、文書により利用者又はその家族から同意を得る必要があることを規定したものであるが、この同意は、サービス提供開始時に利用者及びその家族から包括的な同意を得ておくことで足りるものである。
   
(22) 居宅介護支援事業者に対する利益供与の禁止
  居宅基準第35条は、居宅介護支援の公正中立性を確保するために、指定訪問介護事業者は、居宅介護支援事業者又はその従業者に対し、利用者に対して特定の事業者によるサービスを利用させることの対償として、金品その他の財産上の利益を供与してはならないこととしたものである。
   
(23) 苦情処理
居宅基準第36条第1項にいう「必要な措置」とは、具体的には、相談窓口、苦情処理の体制及び手順等当該事業所における苦情を処理するために講ずる措置の概要について明らかにし、利用申込者又はその家族にサービスの内容を説明する文書に苦情に対する措置の概要についても併せて記載するとともに、事業所に掲示すること等である。
同条第2項は、利用者及びその家族からの苦情に対し、指定訪問介護事業者が組織として迅速かつ適切に対応するため、当該苦情(指定訪問介護事業者が提供したサービスとは関係のないものを除く。)の受付日、その内容等を記録することを義務づけたものである。
また、指定訪問介護事業者は、苦情がサービスの質の向上を図る上での重要な情報であるとの認識に立ち、苦情の内容を踏まえ、サービスの質の向上に向けた取組を自ら行うべきである。
なお、居宅基準第39条第2項の規定に基づき、苦情の内容等の記録は、2年間保存しなければならない。 。
同条第3項は、介護保険法上、苦情処理に関する業務を行うことが位置付けられている国民健康保険団体連合会のみならず、住民に最も身近な行政庁であり、かつ、保険者である市町村が、サービスに関する苦情に対応する必要が生ずることから、市町村についても国民健康保険団体連合会と同様に、指定訪問介護事業者に対する苦情に関する調査や指導、助言を行えることを運営居宅居宅基準上、明確にしたものである。  
   
(24) 事故発生時の対応
  居宅基準第37条は、利用者が安心して指定訪問介護の提供を受けられるよう事故発生時の速やかな対応を想定したものである。指定訪問介護事業者は、利用者に対する指定訪問介護の提供により事故が発生した場合には、市町村、当該利用者の家族、当該利用者に係る居宅介護支援事業者等に対して連絡を行う等の必要な措置を講じるべきこととするとともに、当該事故の状況及び事故に際して採った処置について記録しなけれぱならないこととしたものである。
また、利用者に対する指定訪問介護の提供により賠償すべき事故が発生した場合には、損害賠償を速やかに行わなけれぱならないこととしたものである。
なお、基準第39条第2項の規定に基づき、事故の状況及び事故に際して採った処置についての記録は、2年間保存しなければならない。
このほか、以下の点に留意するものとする。
利用者に対する指定訪問介護の提供により事故が発生した場合の対応方法については、あらかじめ指定訪問介護事業者が定めておくことが望ましいこと。
指定訪問介護事業者は、賠償すべき事態において速やかに賠償を行うため、損害賠償保険に加入しておくか、又は賠償資力を有することが望ましいこと。
指定訪問介護事業者は、事故が生じた際にはその原因を解明し、再発生を防ぐための対策を講じること。
   
(25) 会計の区分
  居宅基準第38条は、指定訪問介護事業者は、指定訪問介護事業所ごとに経理を区分するとともに、指定訪問介護の事業の会計とその他の事業の会計を区分しなければならないこととしたものであるが、具体的な会計処理の方法等については、別に通知するところによるものであること。
   
4  基準該当訪問介護に関する居宅基準
   
(1) 訪問介護員等の員数(居宅基準第40条)
  居宅基準該当訪問介護事業所における訪問介護員等の員数については、3人以上と定められたが、これについては、訪問介護員等の勤務時間の多寡にかかわらず員数として3人以上確保すれば足りるものである。ただし、各地域におけるサービス利用の状況や利用者数等を考慮し、適切な員数の職員を確保するものとする。その他については、指定訪問介護事業所の場合と同趣旨であるため第3の1の(1)及び(2)に準じて取り扱うべきものである。
なお、サービス提供責任者については、常勤である必要はないが、指定訪問介護における配置に準じて配置することが望ましい。
   
(2) 管理者(居宅基準第41条)
  指定訪問介護の場合と基本的に同趣旨であるため、第3の1の(3)を参照されたい。ただし、管理者は常勤である必要はないことに留意するものとする。
   
(3) 設備及び備品等
   居宅基準第42条は、居宅基準該当訪問介護事業所の設備及び備品等についての規定であるが、指定訪問介護事業所の場合と基本的に同趣旨であるため、第3の2を参照されたい。
   
(4) 同居家族に対するサービス提供の制限
  居宅基準第42条の2は、同条第1項各号に定める場合に限り、同居家族である利用者に対するサービス提供を例外的に認めることを定めたものである。
特に、同条第1項第1号にあるとおり、離島、山間のへき地その他の地域であって、指定訪問介護による訪問介護だけでは必要な訪問介護の見込量を確保することが困難であると市町村が認めた地域において認められるものであり、市町村は、その運用に際して次に掲げる点に留意するとともに、当該地域における指定訪問介護の確保に努めることとする。
市町村は、同居家族に対する訪問介護を行おうとする訪問介護員等が所属する訪問介護事業所から、居宅サービス計画の写し等、同居家族に対する訪問介護が認められるための要件が満たされていることを確認できる書類を届け出させ、これに基づき居宅基準該当居宅サービスとしての実施を認めるものとする。
市町村は、いったん認めた同居家族に対する訪問介護について、事後的にその要件を満たしていないと認めるときは、保険給付を行わず、又は既に行った保険給付の返還を求めるものとする。
市町村は、居宅基準第42条の2第1項各号に規定する要件に反した訪問介護が行われている場合の是正の指導のほか、当該同居家族に対して行われている居宅サービスとして、当該訪問介護員等による訪問介護のほか、他の居宅サービスが適切に組み合わされているかどうか等を点検し、状況に応じて必要な助言を当該同居家族及び居宅基準該当訪問介護事業者に対して行うものとする。
居宅基準第42条の2第1項第5号に規定する、訪問介護員等が同居家族の訪問介護に従事する時間の合計時間が当該訪問介護員等が訪問介護に従事する時間の合計時間のおおむね2分1を超えないという要件は、同居家族の訪問介護が「身内の世話」ではなく、「訪問介護事業所の従業者による介護」として行われることを担保する趣旨で設けられたものであるが、こうした趣旨を踏まえつつ、当該市町村の訪問介護の基盤整備の状況など地域の実情に応じて、当該要件をある程度の幅をもって運用することは差し支えないものとする。
   
(5) 運営に関する基準
  居宅基準第43条の規定により、居宅基準第15条、第20条第1項、第25条、第29条の2並びに第36条第5項及び第6項を除き、指定訪問介護の運営に関する居宅基準が基準該当訪問介護に準用されるものであるため、第3の3の(1)から(5)まで及び(7)から(25)まで(10)の及び(18)を除く。)を参照されたい。この場合において、準用される居宅基準第20条第2項の規定は、基準該当訪問介護事業者が利用者から受領する利用料について、当該サービスが結果的に保険給付の対象となる場合もならない場合も、特例居宅介護サービス費を算定するための居宅基準となる費用の額(100分の90を乗ずる前の額)との間に不合理な差額が生じることを禁ずることにより、結果的に保険給付の対象となるサービスの利用料と、保険給付の対象とならないサービスの利用料との間に、一方の管理経費の他方への転嫁等による不合理な差額を設けることを禁止する趣旨である。なお、当該事業所による訪問介護が複数の市町村において居宅基準該当訪問介護と認められる場合には、利用者の住所地によって利用料が異なることは認められないものである。
   
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